40歳からのキャリアチェンジ

20代はエンジニア・PM、30代はWeb系エンジニア向けのキャリアアドバイザー。40代の今はフリーランスで開発含めて色々やってます。技術ネタとしてはRuby/RailsとJavaScript関連あたり

ロシアのグルジア侵攻の背景を知るための入門書



コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A) (集英社新書 452A)コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A) (集英社新書 452A)
廣瀬 陽子

おすすめ平均
stars本書出版を機に、知る価値はある。
stars「知らない」では済まされぬ「最も危険な火種」
starsやや表面的ではあるが、読む価値は高い1冊
stars2008・8月グルジア戦争〜スターリンの亡霊か?
stars地域全体を見通せる好著

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■本を読む目的の確認
ついちょっと前にロシアがグルジアに侵攻したというニュースがあったと思うけど、この一件にかぎらずチェチェン紛争がなぜ生じているのかということふくめて、中央アジア辺りの情勢ってよくわかんないこともあって少しでも背景が知れればというのが読む目的

■本を読み解くことに価値があるのか?

コーカサス国際関係の十字路」というタイトルからして、これを読み解く事で現在生じている紛争ごとが理解できるかなと思うので価値があると思う。

実際読み終えた感想としてはコーカサス一帯の状況は「複雑」。

日本に暮らしていると、外国とのめもごとはゼロとはいわないけど海を隔てている分、リアルに感じられることって普段はなかなかないし、国内にいるのは基本的には日本人が多く住み、信仰する宗教に関連するもめ事というのも(カルト的な宗教は別として)自分が知っている限りでは大きな社会問題になっていることというのは多くはないかと思っています。

一方でコーカサス地域は、著者によると東はカスピ海、西は黒海とトルコ、南はイランに接するコーカサス山脈周辺の地域を指すそうですが、この一帯は複雑な歴史、民族、言語、宗教、資源、etc...という要素が複雑にからみあっており、ある国とある国が対立していたとしても、対立している軸が単純なものではない事がさらに問題を複雑にしているのかなあと思います。

多様な民族があつまっている地域ですが、言語の多様性(大きな分類でアルタイ諸語コーカサス諸語、インド・ヨーロッパ語族)、宗教の多様性(イスラム教のスンニ派とシーア派ロシア正教)が存在する地域の中で同じ言語、同じ宗教を信仰する人同士が必ずしも同一地域で暮らしているわけではないことに加えて、資源問題もからんでくると、欧米諸国の思惑、影響力を維持したいロシアの動向もあって、元々複雑だったものがさらに輪をかけているみたい。

資源問題で、1つ個人的にちょっと衝撃的だったのが、カスピ海を「海」とするか「湖」とするのかで、周辺地域で見解がわかれているそうです。

普通に考えれば外洋に面しているわけではなく、琵琶湖のような感覚で捉えればカスピ海は湖かなと思うのですが、カスピ海自体、日本の国土と同じくらいの面積らしくそう考えると海という感覚もわからなくもないけど、実はそういう感覚的なことより周辺地域にとって大事なのは、法的な解釈として

湖:沿岸国の共同管理で資源は均等に分割
海:自国の領海にあるものしか開発できない(国連海洋法条約が適用されるらしい)

となるらしく、そうなると自国の領海内で豊富な資源がある国とそうでない国では当然意見が分かれるのは当たり前かなぁと。

この本ですべてのことは書ききれないと、著者もあとがきで書かれており、実際そうかなぁと思うけど、少なくともこの地域で生じている問題の背景にあるものの概要だけを知れるので、この辺りのことを知りたいなぁーと思う人にとっての入門書としてはとても良い本なんじゃないかなと。