40歳からのキャリアチェンジ

20代はエンジニア・PM、30代はWeb系エンジニア向けのキャリアアドバイザー。40代の今はフリーランスで開発含めて色々やってます。技術ネタとしてはRuby/RailsとJavaScript関連あたり

京都花街の経営学



このお正月はものすごい勢いで本を読みまくっていて

「読み終わった本をまとめないと...」

という変な緊張感を感じながらも、どの本についてまとめようかと思っていたのですが、今年一発目は、ちょっとお正月っぽい雰囲気も意識しつつ京都花街の経営学からいこうかと思います

舞妓さんで有名な、京都花街という舞台の独自性をビジネス視点で説明している著者の視点が中々興味深く、本書のポイントとしては

1.一見さんお断りでも成り立つビジネスモデル
2.共存共栄

かなぁと思います。

■なぜ一見さんでも成り立つのか?

一見さんお断りというのは、それなりの理由があるようで、舞妓さんたちの芸自体をきちんと評価できるくらい、お客さん自身も目の肥えた人であり、そういうお客さんからの紹介で来る人もそれなりに信頼の出来る人ということが担保されていて、そういうお客さんに対して行う芸も、そのお客さんの目に叶う芸を提供することで、それ相応の料金を請求してもお客さんとしては満足できるという図式になるようです。

(ちなみにどんな著名人であったとしても、一見さんに対しては、やんわりとお断りするそうです)

このようにして、プレミアムとなる客層をキープしつつも、それにあぐらをかくことなく、京都花街というある種のブランドイメージから極端に乖離しないようなものも序所に取り入れているそうです。

その部分については、京都花街の運営が中央集権的ではなく、中小企業的な人の集まりに近いため、各自が京都花街とはどのようなものなのかという”空気”を読みつつ独自の営業を行い、それが成功すれば、他者もその成功を見習って取り入れていき、それが地域全体に浸透するというのが代々行われているそうで、今では舞妓さんの募集のためにインターネットを活用したり、舞妓さんがブログを書いたりということも行われるようになったそうです。

伝統という言葉の響きからすると、閉鎖的というイメージがあったのですが、そんな自分の単純な発想をあっさりと打ち崩してくれる、”したたかさ” を地域として持っているからこそ、伝統を築いてきているのでしょうね。

■共存共栄

京都には代表的な5つの花街というのがあるそうで、それぞれはある意味ライバルで、さらにその花街にあるお茶屋(お座敷の全てを手配するプロデューサー的な職業)さんや、置屋さん(舞妓さんが所属するタレント事務所的な所)それぞれもライバルとなるそうです。

自分たちの特色をきちんと把握していて、その地域の中での”ポジション”をしっかりと自覚をしつつ、京都花街としての地域全体を良くするにはという視点を持ってビジネスをしているように感じました。

これと全く同じ図式が、MLB かなぁと思います。

というのも、MLBも球団同士はライバルではあるが、球団のある地域だけを考えず、MLBというマーケットを広げるために、北米地域、中南米、さらにはアジアというように視野を広げることをMLBとして取り組んでいるからです。

共存共栄 という観点では京都花街もMLBも同じような戦略なのかなぁと思いました。(MLBのことについては、サッカーで燃える国 野球で儲ける国―スポーツ文化の経済史を読むといいかも)

■この本はどんな人にオススメ?
人材育成というのは、どの分野でもかなり難しいと思うのですが、舞妓さんとして1人前に成長するまでに、本人のやる気はもちろん、周囲の環境や、その後の舞妓さんのキャリアパスなども含めて見ると、また違った視点での人材育成の本としてヒントになるように思えるので、人事系の人や人材ビジネスに関わっている自分のような人間にはオススメかも。

あとは、単純に京都の花街という舞台裏がどうなっているのかをちょっと知ってみたいというか雑学を仕入れたい人にもなかなか興味深いかもね。


京都花街の経営学



京都花街の経営学
posted with amazlet on 08.01.04


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