最近ご無沙汰だった脳に関連する本がまた読みたくなってきて、たしか日経の書評か誰かのブログで取り上げられていて、気になっていた脳は奇跡を起こすという本を読みました。
今までは、脳のxxxの特定のこの部分は○○の機能をつかさどっているという「局所的な考え」が支配的だったようですが、最近の研究では、この局所的な考えでは説明がつかないような事例が出ているそうです。
少し話がそれますが、たしかNHKスペシャルの闘うリハビリという番組だったと思うのですが、事故により右脳か左脳のどちらか半分を失ってしまった少年がその後のリハビリの成果で、多少のマヒは残っているけど、普通に歩けるようになるまで回復したというのを放映していました。
これなんか、局所的な考えでは説明つかないし、これに似たようなことが本書でもいくつか出ていましたが、
「私は生まれつきアタマが悪いから」「性格は変えることができないから」と決めつけるのは科学的ではない。人間の脳には神経細胞と神経細胞の結びつきを変化させることでその働きを更新していく「可塑性」と呼ばれる驚くべき能力が備わっていることが明らかにされているという脳には可塑性というのがあるというのが最近の研究結果では明らかになっているようです。
脳は奇跡を起こす P.323より
可塑性に関して、本書で一番興味深いなぁと思ったのが、マイケルマーゼニックさんとう人が提唱している脳マップという考えで、外国語の習得が何故難しいのかというと、言語的マップという領域が仮に脳のどこかにあって、外国語の習得をしようとすると言語的マップをめぐって
「可塑性の競争」
という母国語と外国語とのあいだでの陣取り合戦が起こるけれど、母国語の習得が増えれれば増えるほど、この言語的マップのスペースを支配してしまっていて、結局は外国語の攻め入る余地が限られて上達できないとのこと。
※外国語の上達の秘訣は、母国語が言語的マップを侵略しないように制限することであり、異国にいって、その国の言葉しか使えない環境になればおのずと上達するということが書かれていたのですが、以前の職場で英語漬けだった時が一時期あって、その時の自分の脳マップは変化があったのかもしれないと思うと、結構これは納得。
ただ、ここまで書くと
「えっーだったら、幼少期には外国語の習得できる人がいるから、そういう人はどうなの?」
という反論が聞こえてきそうですが、マーゼニックさんの考えだと
二言語のすべての音を処理するのにひとつの大きなマップを共有している。ふたつの言語に共通する音のライブラリがあるということで、この考えは個人的には筋が通っているような気がします。
脳は奇跡を起こす p.85より
このことは、言葉に限らず、俗に「頭がいい」と言われる人は、上記の音のライブラリに似たような感じのものを、他にもいくつか持っていて、そのライブラリをうまく活用しているんじゃないかなぁと思います。
脳の可塑性によって人間の行動が柔軟になったり、反対に固まってしまうこともあるそうで、人間の脳は、残念ながら都合良く出来ていないですが、だからこそ、可能性もあるのでしょうね。
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