以前から予約していた本が最近届いて、タイミング良く国際政治に関するものが続いていて、先日のコーカサスのやつに引き続き、世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃をやっと読み終えました。
戦争開戦の前の当初試算では「アメリカの負債は17億ドルだけです」という話がとあるテレビのインタビューでされていたそうですが、実際にはかなり泥沼化したイラク戦争の本当のコストは、計量出来る控えめな数値で3兆ドルではないかと、著者のジョセフ・E・スティグリッツさんが膨大、かつ、つぎはぎだらけの様々なデータからこの数値を算出されたそうです。
当初目論見から、あまりにもかけ離れた結果になっていますが、詳細は本書を読んでもらうとして、個人的に印象に残った箇所を3つとりあげます
1.戦地から戻った兵士に関する問題
2.一時的にということで戦地に派遣された州兵
3.ずさんな会計
1.に関しては、イラク戦争固有の出来事として、外傷性脳損傷(TBI)の生存者がかなりの数いるらしく、こういう人に対する医療費の捻出だけではなく、こういう方達の介護をする家族の負担や、こういう方達が病気になったことによる生産性の喪失....といった部分でかなりのコストがかかっていると著者は指摘しています。
2.については、本来だったら各州にいるはずの兵士がイラクにかり出された結果、本来の業務を担う人材不足により結果的にハリケーンカトリーヌによる被害の復旧に支障が出たことも指摘しておりこのコストもばかにならないのかと思います
3.については、将来のコストを”見えなく化”するために、その時点での支出を低く見せる現金主義による会計処理をした結果、会計の不透明さを生み出しており、これが原因でいったいいくらのコストがかかっているのか国民の目を欺いていると指摘しています。
3兆ドルという数字の妥当性については、賛否両論あるかもしれませんが、1つ言えそうな事はアメリカ人は、戦争に限らず物事を始めることについてはとても機敏に動くものの、それが本当にうまくいっているかどうかというチェック機能を働かせるということについては、お世辞にも上手ではなく、それが今の状況を生み出したのかなと本書を読んで感じました