40歳からのキャリアチェンジ

20代はエンジニア・PM、30代はWeb系エンジニア向けのキャリアアドバイザー。40代の今はフリーランスで開発含めて色々やってます。技術ネタとしてはRuby/RailsとJavaScript関連あたり

米中激突



1月に読んだ本はたぶん7冊程度なのですが、その中から、堅い本の書評を1つ。


米中激突――戦略的地政学で読み解く21世紀世界情勢



フランソワ・ラファルグ
作品社
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副題に地政学っていう耳慣れないことばがありますが、字面だけ見ればり地理+政治っていうことになるんだろうけど、自国の領土内にどういう資源、例えばだけど、わかりやすいのは石油資源だけど他にも食糧栽培のための肥沃な土地なんてってのもこれに含まれそうだけど、そういったものを、どれだけ自分の国で確保するか、もしくは友好国との間でそういうものをバーター的に取引するのかというような感じの政治的な思惑みたいなものが地政学という風に自分の中では解釈しています。

実際の所、この本は、地政学自体についてあれこれ書いてある本ではなく、そういう考えとベースにして、中国とアメリカというそれぞれの大国同士の思惑だったり、表だった出来事の裏にある彼らの戦略がいったい何なのかをうまく説明してくれています。

まずアメリカの方はというと、長期間に渡って、政治、経済、軍事力という部分において他の国をしのぐ優位性を保持して覇権国家としての地位は揺るぎないと思われたけど、最近の状況からすると、その地位は安泰でもなくなっており、近いうちに中国やインドという大国の追い上げを気にしているように読み取れます。

従来であれば、他国から優秀な科学者が集まり、そういった人材のおかげで科学技術の進歩を促し、それら技術の中で軍事転用されたり、民間でも活用されて、国の発展に寄与して・・・という流れがあったかもしれないが、中国やインド出身の人材が必ずしもアメリカを目指さなくなりその結果としてすこし長い引用になるけど
アメリカのテクノロジーの優位の喪失は、いずれは政治的地位の喪失を意味する事になるだろう。だから炭化水素などの原材料鉱床のコントロールはアメリカのバイタリティーと成長を維持し、外交の道具として中国とたぶんインドに対する影響力を保有するためになににもまして今後の至上命題となるだろう。(P.256より)
とのことで、アメリカにとっては中国、インド発の優秀な人材が今ほどは手に入らなくなる将来を危惧して、他の部分に目をつけて、それが原材料鉱床の確保という行動に出ていると本書では解説しています。

一方で、中国にしてみても、石油、天然ガスといったエネルギー資源や、水資源、食糧確保というのは、日本とは比べ物にならない大量の国民を抱えていることを考えると、欠かせないものであるのと、またそういった資源を押さえておく事で、アジアにおける自国の優位性を示す事が出来るようです。

天然ガスや油田を巡る争いというのは他の本でも読んでいたので、それほど目新しいとは思わなかったけど、前からものすごく疑問だった、チベット独立を巡る中国とチベットの争いの背景の1つにありそうなのが、「水の城」と例えられているチベット高原を巡っての中国の思惑で、この水資源を押さえる事で、下流域に存在する他の国口に対しての影響力はかなりのものになるので、それもあってか、そう簡単にはチベット独立っていうのは許せない状況のようですね。

こうやってそれぞれの国において、どの地域のどんな資源を巡って直接的/間接的に争っているのかというが本書全体で丁寧に解説されていますが、個人的には似たような本を以前読んでいたこともあって、内容的に重複しそうな部分もあったので、目新しさには欠けるかなぁとも思った。

この本の最初に掲載されている地図に、世界の主要地域のエネルギー資源の情報が掲載されており、それを頭に入れつつ本書を読み進めると、中国が今何を考えて外交活動しているのかというのが1つ深く読み解けるので、国際関係のニュースが深く読み解けるようになるのではないでしょうか