40歳からのキャリアチェンジ

20代はエンジニア・PM、30代はWeb系エンジニア向けのキャリアアドバイザー。40代の今はフリーランスで開発含めて色々やってます。技術ネタとしてはRuby/RailsとJavaScript関連あたり

奪われる日本の森

全然関心がなかった分野というかテーマの本だけど、適度な分量で読みやすいのと、現状分析から始まって、その問題の大きさ、問題解決に向けての提言という流れがスムーズに展開されていてこの分野の問題を理解する上での入門書的な本としては申し分ない感じがします。

しかも付け加えると、この類いの本にしては目次がしっかりと書かれていて、目次を見ればおおまかな内容が理解できるという意味でも良書かなと思います。

で、何が起きているのか?

山林を外資から目をつけられているが、その動きというのがあまりオープンになっていない上に、その意図が外部からは伺いしれず、余計に不気味というか不安を駆り立てるようなことが生じているそうです。

単純に考えて、木材それ自体の価値に目を付けるというのは、確かにある側面だけをとりだせば意味があるのかもしれません。(例えば、日本のヒノキが高級材として中国の富裕層の住宅向けに注目されているということ)とはいえ、木材は国際商品であり、国際価格のためそこまで極端に日本の山林に価値があるというのはあまり考えられず、だとすると、山林それ自体ではない所に着目して外資が狙っているのではということを本書では展開されています

外資が狙っているのは、山林に眠る地下水=水資源。

一部関連しそうな個所を引用すると

豊富な淡水資源は、日本人が気付いていない資源の1つだが、逼迫する世界の水需要の中で、日本の地下水は魅力的な天然資源の筆頭である。46ページ

とあり、水は昔はタダという感覚が自分たちにもあったけど、最近は水を買うことも普通になってきているし、日本以外に目を向ければ水不足で困っている地域、国というのは結構多いわけなので、これは結構納得の行く話かと思います。

「山を買うことと、地下水がどう関係あるの?」

って素朴に疑問があると思いますが、日本では、土地の私的土地所有権というのがものすごく強いそうで、それがあることで

地下水は土地利用者の権利になってしまう。森林売買や地下水の権利について、法規制がないのは盲点だ 30ページ

というカラクリが成り立つそうです。
しかも、現在山林それ自体の価格っていうのは下落する一方なので、安い時に購入しておいて、山林の下のお宝である地下水についても、日本の土地についての法規制が甘いから、ガンガン水を吸い上げて、それを需要がある地域に売れば、儲かるっていう構図が成り立つわけです。

総じて、私たちは、資源の占有や土地の利用について、すでにグローバルな環境下にさらされていることの危うさに気づかなかなければならない。
〜中略〜
森だけの問題ではない。水だけの問題ではない。もっと大きな問題が含まれていることを多くの人たちが気づかなかなければならない。89ページ

豪マッコリー保有の日本空港ビル株、TOBへという記事にもあるように、少し前に、羽田空港のターミナルビルのオーナー企業の日本航空ビルディングが豪州投資ファンドにTOB仕掛けられたことがニュースになりましたが、こういう空港に限らず、電力、通信、天然資源といった国の基幹となるインフラについて、水面下でどんなことが起こっているのかというのをある程度は問題意識を持っておく必要があるだろうし、のほほんと過ごしていたら、気がついたら取り返しのつかないっていうことが十分ありそうなんですね。

奪われる日本の森―外資が水資源を狙っている
平野 秀樹 安田 喜憲
新潮社
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