世界のエアライン情勢がよくわかる
日本に格安航空はなぜできないのだろう?
格安航空会社の歴史と現状、そして日本
新書という性質上、深い所まで突っ込んではないのかもしれないけど、世界の航空事情、特にLCCという格安の運賃を武器にシェアーを伸ばしてきた航空会社のそのコスト削減のカラクリや、その裏にある問題点、さらに日本の航空事情の問題点というのを広く理解出来る意味では良書かなと思います。
個人的に参考になったのは世界のLCCに関しての売上高、営業利益、旅客数、搭乗率、コスト指標に関する記載事項。この部分について簡単にまとめを。
世界のLCC(2008年情報)
順位 | 売上高 | 営業利益 | 年間旅客数 | 搭乗率 |
1位 | サウスウエスト | サウスウエスト | サウスウエスト | 春秋航空 |
2位 | エアベルリン | ウエストジェット | ライアンエアー | アレイジャイアント |
3位 | イージージェット | イージージェット | イージージェット | エアアジア |
※エアトランスポートワールド誌09年07月号
こんな感じで順位がまとまっていました。名前を聞いたことがあったのは、サウスウエスト、ライアンエアーあたりで、春秋航空って中国系?なのかわからないけど、あれだけの国土があると短/中距離便中心に運行すれば、たとえ飛行機自体が大型でなくても、それなりの搭乗率が見込めるのかなとか思いました
コスト指標
2008年の各航空会社の有償座席キロ
航空会社 | 有償座席キロ |
エアアジア | 2.36セント |
サウスウエスト | 5.47セント |
イージージェット | 7.23セント |
有償座席キロという1座席を1キロメートル輸送するときのコストという視点で、コストに関する数値を算出するのが航空業界で一般的なのかわかりませんが、こういう形で数値化するのは面白い。
LLCの中でも、エアアジアという東南アジア地域を中心にシェアー伸ばしてきた航空会社がダントツに安い。
エアアジアは、この数値が2009年にはさらに下がって2.25セントになったそうです。
自分の仕事上、別に航空会社のことを知っていてもそんなに得することはないけれど、人材サービス業の収支計算ってなんとなくどんぶり勘定な所(*)があるような気がしてならないので、1人あたりの運賃に占めるコスト構造/指標の考え方については少し参考になるように思います。
LLCの特徴や利用におけるメリット/デメリット
一定の安全基準を満たしつつ、コスト削減のために何をするべきかというのを経営者が考えて実践しているからLLCが格安で運行することが実現出来ているようです。
サウスウエストの経営手法については他の本でもとりあげられることがあるかと思いますが、エアアジアもサウスウエスト同様、家族主義的な経営のようで、CEOのトニーフェルナンデスという人は
常にカジュアルな服装でいるのは会社の仲からできるだけ階層を排除したいからだ。CEOがネクタイを締め、高そうなスーツを着ると、それだけで気軽に話しかけられない雰囲気になり(P.153より)
という一文がありましたが、CEOだからふんぞり返っているというのは無いそうで、実際に現場の仕事も手伝うこともするそうです。
そんなLLCですが、万人にとって良いかというと決してそういうわけでもなく、
- キャンセル料とても高い(場合によってはキャンセル出来ず全額負担)
- 座席指定を行わない(早いもの勝ち)
- 機内サービス設備の簡素化(飲み物出ない場合あり、トイレも設置スペースの関係上少ない)
- 欠航の時の対応/フォロー手薄(ギリギリの人員で運営しているため)
という特徴があるためこれをふまえると、LLCの利用に向く人は旅慣れている人、反対に向かない人っていうのは、フルサービスを望む人、はじめての海外旅行、団体行動好きという形に分類できるようです。
これから夏休みに入って海外に行く方もいると思いますが、LLCのからくりを理解して、メリット/デメリットを自分なりに分析してうまく利用するのが賢い使い方なんでしょうね。まぁ我が家はまだ小さい子がいるから海外旅行なんて当面考えられないですけどね・・・
(*)紹介手数料のパーセンテージの根拠。業界標準で20~30%みたいな形で落ち着いているけどなんでその数値なのかって誰もロジカルに説明出来ないのでは?