世界では二国間の包括的な航空自由化協定であるオープンスカイ協定が主流になっている一方で、日本はナショナル・フラッグ・キャリア(たぶんJALのことっぽい)の路線を確保するため、自国の空港の発着枠を交渉カードとして使いながら二国間の交渉を繰り返す政策を取ってきたため、特にアジア地域において日本の空港の相対的な地位が低下しているそうです。
※2007年5月のアジアゲートウェイ戦略の報告書で最終的にオープンスカイ政策への転換を表明したみたいなので、政策変換はあったみたいです。
本書読んでいて個人的に重要かなぁと思えたのが以下の2点でしょうか。
1.国内線における羽田空港を拠点として、各空港を結ぶハブ・アンド・スポークだけではなく、ダイレクトにローカル空港を結ぶポイント・トゥ・ポイントという考え
2.羽田空港の利用において、ペリメーター規制という制限があり、羽田から最も遠い国内空港の石垣島までが2000kmで、この範囲内にある空港しか羽田の国際線利用の昼間の路線の対象として考えない
1.のポイント・トゥ・ポイントで、有名な航空界社といえば、アメリカのサウスウェスト航空で、当初はテキサス州のダラス、ヒューストン、サンアントニオの3都市を結ぶ(現在は拡大して63都市)路線を徹底したローコスト化により、大手航空会社と競合しない市場を作ったということでビジネス系の書籍で取り上げられることもあります。(ブルー・オーシャン戦略とか)
サウスウェストの成功の秘訣はローコスト化によって非常に安い航空運賃が実現できたというのも1つの要因かもしれませんが、それ以上に本書の中で出ていた
ポイント・トゥ・ポイントの持つ強みである正確な運行時間と時間の節約を強化することが出来たのだ。という所で、飛行機はとかく乗り降りが煩雑で、乗り継ぎをした場合に、状況によっては時間通りに到着できないという問題点をポイント・トゥ・ポイントでは解決しており、
日本の空を問う P.128より
自動車など他の手段で移動していた人たち、あるいは移動のコストが高かったので移動しなかった人たちを、新たな顧客として取り込むことに成功したという成果を得られたから、ビジネスとして成り立っているのかと思います。
日本の空を問う p.128より
サウスウェストのやり方をそのまま日本の国内線で取り入れてもうまくいくかどうかはわかりませんし、本書でアメリカや欧州では経済拠点が分散されているのに対して、日本は東京に一極集中しているため、移動の需要が多くはない点からすると条件的に難しいという考察がされています。
ただ、国際線については、中部国際空港、関西国際空港などは、キャパシティに余裕があるそうで可能性はあるそうですが、それでも関西国際空港の高い発着料や、航空界に最低料金規制があるという点などが障壁になりそうということが示唆されていますが、
たしか北海道の道内のみを結ぶ航空会社があったような気もするし、移動のコストが高かったので移動しなかった人たちというのが、これだけ広い日本のどこかの地域にはあるかもしれないから、ポイント・トゥ・ポイントという考えも、もう少し広がりがあってもいいのかなぁと思います。
2.についてですが、成田と羽田の済み分けがありながら、このようなペリメーター規制という枠組みのなかで、国内線の延長で、チャーター便扱いで、羽田とソウルの金浦空港との間で路線が就航している状況を踏まえて、政府は擬似的な国内線扱いで、羽田と上海の虹橋空港の運行を計画されているそうですが、羽田は国内線だけというルールを見直してみてはという提言がされています。
政治的な問題もあるのでしょうけど、利用者側の視点からすると、ペリメーター規制の枠から外れるけど限りなく近い所に北京、台北、香港などが位置するそうで、比較的利用者が多いこれら空港が羽田と結ばれることで、かなり便利になるだろうし、相対的に地位が低下している日本の空港事情も改善されるのではとふと感じた。
前に書いた脱・道路の時代とあわせて読むと、日本の交通インフラの課題点が比較的捉えやすいのかなぁと思います。