40歳からのキャリアチェンジ

20代はエンジニア・PM、30代はWeb系エンジニア向けのキャリアアドバイザー。40代の今はフリーランスで開発含めて色々やってます。技術ネタとしてはRuby/RailsとJavaScript関連あたり

走る意味―命を救うランニング

走る意味―命を救うランニング (講談社現代新書)
金 哲彦
講談社
売り上げランキング: 2641

会社のお昼休みに本屋で立ち読みしてて帰ろうと思ったときにたまたま見つけた本で

「あぁーまた金さんの本出たんだ。今度はどんな内容かな?」

と気になって最初の数ページ読んで、ビックリしました。

金さんって一般的に有名かどうかわからないので、まずはどんな人なのか簡単に書いとくと、マラソン解説や最近は、体幹をつかったジョギングというのを提唱していて、それに関連する本が我が家にも数冊あって、金さんの解説はとってもイメージしやすく個人的には一番参考になる書籍かなと思っています。そういえば2007年10月頃に、金さんが指導してくれるというジョギング関連イベントにうちの奥さんと一緒に行ったことがあるけど、その時にも、憧れの金さんに会えて嬉しかったのをよく覚えています

で、話を戻して、何が驚きだったのかというと、金さん大腸がんを患っていたらしく、その後手術をして2009年の年末には、ごく限られた人しか達成出来ないサブスリー(3時間切り)を達成されたということ。

最初の方のページに、その時のゴールシーンの写真が出ていたので、写真見て

「元選手とはいえ、がんを克服してフルマラソン走り切るのは凄いし、ましてサブスリーっていうのが凄い!」

と単純に思ったけど、その達成したことよりもこの本を読んで金さんの人生って波乱万丈だったとは全く想像できませんでした。

本書は金さんのこれまでの生い立ちや、何故、それまでの日本名から金哲彦を名乗るようになった経緯、リクルートの選手・監督を経て、現在のNPO法人ニッポンランナーズ立ち上げにいたるまで・・・という事が書かれているのですが、読了後に感じたのは、大きく2つ(親がどういう気持で子供を育ているか、ガンという病気の本当の怖さ)感じました。


■親がどういう気持で子供を育ているか

まず金さんのこれまでの生い立ちを簡単にまとめると、決して裕福とは言えない家庭で育ち、高校時代も選手としては優秀だったけど病気などの影響で一時期思ったような記録がなかなか出ず、結果として、学費免除の優遇をされるような推薦枠というのは得られないが、その後勉強を頑張って早稲田になんとか合格。

学校に入ってから部活動に専念するためにアルバイトが禁止されていたこともあり、ご両親の仕送りでなんとか生活を送りつつという厳しい状況だったけど、練習に精力的にうちこんだおかげで、大学入学当初は選手としては決して上位に入る立場ではなかったそうですが、箱根駅伝で山登を任されて、本人曰く「元祖山の神」として名を馳せたそうです。

その後もリクルート入社後の選手/監督人生、現在のNPO団体の活動・・・と駆け足で来た人生にある日突然ガンの宣告という大きな壁にあたり、金さん自身もショックを受けたそうですが、それ以上に、ご両親にその事実を伝えたときに、お母さんは泣き崩れたという件りがあるのですが、お母さんの心境からすると、せめて自分の子供だけでも自分たちと同じような境遇に陥らず苦労をして欲しくないという気持ちでここまで来たのに、何故、ガンにかかったのという何ともやりきれない気持ちになったそうです。

自分も子供を授かるようになってから、うまく言えないけどこの金さんのお母さんのような感覚に近いことは日々感じています。

正直な所、仕事も育児の手伝いも両立するのは体力的にも精神的にも大変な部分あるけど、自分が両親(特に母親)に小さい時から今にいたるまでに色々としてもらったことを考えれば、今度は自分が、子供のためにする順番なのかと自然と思うようになったし、そう思うとなおさら、子供がガンという事実を聞かされた金さんの母親の心境というのは相当なものだったのかなと思い金さんのご両親がどういう気持で育ててきたのかというのが読了後に心にジンと染み渡る感じがしました。

■ガンという病気の怖さ
この本を読むまで、正直ピンとこない部分があったのですが、ガンは再発の可能性があり、手術でしっかりと除去出来たと思っていても、見えないところで転移していることも十分にありえるために、いつ、また生と死の狭間に立つのかという怖さがあるそうで、そのあたりのことが本書でも書かれていました。

本書読むとわかるのですが、金さんって物凄く肉体的にも精神的にもタフでそれが災いして、限界まで頑張りすぎてしまってそれが結果として、体調異変につながった可能性もあるのかもしれませんが、いづれにしてもそんな人でも、ガンを患って手術をした後でも、再発するのではないかと日々向き合う怖さがあるというのは、なんかうまく言えないけど、自分もショックを受けました。

金さんがそういう恐怖に立ち向かうために、再び走り出し、術後1年もしない状況でろくに練習も詰めない最悪の準備の状況で、タイムは過去ワーストという時間だったそうですが、それでもフルマラソン完走し、そして、前述のサブスリーというのを成し遂げます。

本書最後の方に

人間の生存本能からくる行動である「走る」ことは、「生」を実感させて くれます。だから、走る意味は生きる意味にも通じているのだと思いま す。293ページ
とありましたが、この本のタイトルである「走る意味」というのが金さんにとって何なのかというのが深く心に残るそんな1冊でした。